INTELLIGENCE
♮ 中心仕立の大事さ
Copywritting by Nobuo Nakahara
かなり以前からの(公財)日刀保の認定書の件であるが、刀の真偽判断を銘字の一点一画にこだわりすぎて、それより前に一番大事な中心の仕立についての精査が不足しているように思われる。勿論、私個人の見解であるが、私は中心の仕立を大前提にするのであり、それでの違反や加工がなければ刻銘の詮議精査という順序が良いし、それが唯一の手順であることは、誰も疑いを持たないはずである。
中心仕立とは、中心の肉置が第一であり次に鑢である。当然、それらと併行して、目釘孔の位置や形状、そして、一番大事な研溜の位置と焼元の確認である。これらを通過してから、刻銘の一点一画の詮議になっていく。
さて、先般、私が講師として開催されたオランダでの研究会席上での研究刀の一振に対しての外人の発言に、「これは二代銘ですよね・・・」との発言があったが、まさにこれは、中心仕立を見ないで銘字の点だけを捉えてのもので、つまり、“木を見て森を見ない”という諺に例えられよう。
以前、新刀・祐定(年紀付)の作を知人の依頼で日刀保に提出したら、見事に偽銘(不合格)となった。私は学芸員に所有者に理解できるように説明を求めたところ、学芸員は過去の特保認定例での同作の年紀付のものを七例程を私に中心写真で呈示した。
私が提出(所有者ではない)した作との銘字の違いを学芸員は説明したが、その学芸員に、「私が審査員なら、呈示資料の中で三例は正真としては通さないよ」と発言した。すると、それを聞いた学芸員は怪訝な表情で黙った。これは中心仕立での指摘であり、私は学芸員にそれを説明したが、学芸員は無反応で肯定しにくかったようであった。
(文責・中原信夫 令和元年十二月四日)