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INTELLIGENCE

♮ 一振の追憶 その41(鈴木加賀守貞則)

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

脇指  銘
鈴木加賀守貞則
延宝四季二月日

刃長/一尺七寸九分、反/四分七厘弱、本造、行の棟、中心は生で孔は一つ。
 
 
[地肌]
小板目肌が特によくつんで精美な肌合となる(鎬地は無地状となり肌目は不明)。
[刃文]
小沸出来で沸匂が極めて深くなった大乱となり、焼幅も深い。大坂風の焼出あり、表裏よく揃っている。刃中には足は入っていない。
[鋩子]
直状で深く、先は小丸となって、返は深い。

以上の出来ですが、今迄に経眼した加賀守貞則の中で一番沸匂の深い作例であり、総体の刃文・匂口が師とされている井上真改の同時期の匂口と瓜二つです。  さて、今迄に判明した資料等により、初代貞則は延宝八年没、二代貞則は養子であって天和三年に正式に二代目になるという。

したがって本脇指は初代貞則であって、井上真改在世中の作という事になります。初代国貞が慶安五年没でもあり、また最初から「貞」という銘字を貞則が刻っている事から、貞則は最初は初代国貞に入門、初代国貞没後には真改門になっていると解釈するのが自然です。

 

本脇指の際立っている深い匂口についてですが、推測ではありますが私見を述べておきたいと思います。

初代貞則で過去に経眼したのを思い出しても、本脇指のような匂口は全くありませんでした。しかし、延宝年紀の真改には、この様な匂口がある事は事実。これを如何に解釈するかですが、私見として、この延宝頃に特殊な鉄が少量ながら存在した。それを限られた刀工が使用した結果、この様な匂口になったと考えられます。刀工が使う鉄質によって作風(主に匂口)が左右される事は否めません。なので、刀工は鉄質に敏感になっていくのです。つまり、料理の食材と全く同じことです。

では特殊な鉄とは何か、おそらく南蛮鉄と称される種類であり、輸入でしょう。南蛮鉄と言っても多くの種類がある事は衆知の事実。中でも特殊な少量の南蛮鉄を一門の中で使用したと考えれば、およそ筋は通ります。

 

私は常々、助広の濤瀾刃も同様であろうと、かなり以前から研究会でも発言してきましたが、そう考えなければ、真改、助広やその一門にごく少数でごく短い期間にのみ、こうした匂口が存在する事実を説明出来ないからなのです。

当然ですが、助広と真改では鍛錬方法や、地鉄の組合、造込等が違いますから、同じ鉄を使っても各々に微妙な相違は地刃に出てくると思われます。
(文責・中原信夫 平成二十九年四月)

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