INTELLIGENCE
+ 縁について〜その2
Copywritting by Nobuo Nakahara
前回はF図の縁の構造について述べましたが、今回はこのFを真横の二方向から見た写真F-2とF-3から話を進めていきたいと思います。
まずF-3を見てください。腰金の刃方と棟方の傾斜(上に向かう角度)が全く違います。Fの縁の天井金を基準(底辺)にして、刃方と棟方を目見当(めけんとう)・目測(もくそく)で見ても、明らかに棟方よりも刃方の傾斜が強くなっています。この角度の違う傾斜の延長線(F-2の点線)が、柄を真横(頭を左、縁を右)から見た時の俗に立鼓(りゅうご)と言われる柄の形状(柄形/つかなり)となってあらわれてくるのです。概ね、両立鼓(もろりゅうご)と言われる柄形も、縁のこうした形状から生まれるものであって、縁の形状を無視した勝手な立鼓はとらないとされています。
つまり、柄形は縁の形状からしか生まれないという事で、逆に言えば、縁はその様な形に必ず作ってあるという事です。したがって、時代が下る縁の形状は、古い時代の縁の形状とは相違しますので、私達はその形状を見て、ある程度の時代を推測してきただけなのです。
今回の柄形は、柄全体を真横から眺めたものですが、前回のFの写真にもあります天井金の形状が、柄の断面の最初の形状となり、順次ですが頭の方へいくに従って、その断面には変化が出てきます。つまり、柄を手で握る部分の断面と肉置は表裏で相違しますし、それでなければ絶対にいけません。しかし、こうした肉置の誠に微妙かつ細かい点については、紙面では絶対に表現できませんので、出来れば、古い柄を入手されるか、さもなくば柄下地のみだけが一番良いのですが、それを実際に手で握ってみて、前述の微妙な点を実感していただきたいと願っております。
このように、縁にしましても皆様はおそらく前述のような形状や構造があるとは気づかれてはいなかったと思います。しかし、事実は前述の通りですから、今後、縁にしても頭にしましても、十分注意してみていただければと思います。
さて、このように拵というのは極めて難しい点があり、単に拵を作るとか、写物で拵を作るとかいいましても、その決め所があるわけで、その一番の基となるのが、縁であるということを是非とも理解していただきたいのです。ただし、拵には当然、地方色があり、上下の階級によっての差や剣術の流派による差もあり、当然時代による差異もあり、全国すべて同じ傾向とはいきません。こうした点も含めて、さらに拵や金具にスポットを当てていきたいと念願しています。
ただし、最後に申し上げておかなければならないのは、拵や金具については判らない点が極めて多くある事です。それを私が認識した上で、今回の話をさせていただきました。
(文責 中原信夫)