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INTELLIGENCE

+ 小柄の構造について〜その1

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

小柄といっても、読者の皆さんは余り興味は起こらないかもしれませんが、本欄では笄などの構造については、かなり話をしたと思いますが、今回は小柄の構造について、私が今までに体験し、感じた点を踏まえた推論を展開しておきたいと思います。ただし、私のこれから述べます事と、従来から一応の常識(定説)とされてきたものとは相違する点がありますので、飽くまでも私の推論として参考にしていただきたいと思います。

 

さて、小柄というと、従来からワンボディーである片手巻(一枚張・片手張ともいう)構造が一番古いとされ、一枚の板を片面一個所(刃方または棟方)で鑞付したものとされています(A・B参照)。したがって、小柄の表側の模様(図柄)は裏打出(うらうちだし)といった方式(E-1・2)になっているとされています。

では、この片手巻構造から二枚張(裏張ともいう)の構造に変化し、その二枚張では模様を地板嵌込方式として、地板を表側にある小縁(こべり/縁・ふち)に囲まれた内側に嵌め込んだものです。この二つの方式では、いつの頃から片手巻(裏打出)から二枚張(地板嵌込方式)に変化したのでしょうか。それは大体、江戸最初期頃とされているのが、従来の一応の定説に近いものであるとされてきました。

しかし、古い小柄の構造では、前述の二つの種類しかないのでしょうか。

 

では、A、B、C、D図を見てください。小柄の断面部を示しています。AとBが片手巻であり、CとDが二枚張です。このA〜Dは『日本装剣金工史』(桑原羊次郎著・昭和十六年刊)からの引用ですが、まずAとB(片手巻)について私見を述べてみます。ただ、このA・Bですが、刃方は狭くなった所です。しかし、棟方はある程度の幅広さがあります。そして、Bでは継目は裏側に寄っていますが、中央部での継目も実見していますので、このA・Bは一応の目安としておいてください。

 

さて、片手巻は小柄の棟方または刃方で鑞付(接合・継目〈つぎめ〉)しているのですが、今回はその継目ではなく、裏打出方式という事から考えてみたいと思います。さて、片手巻は基本的に、一枚の金属板を折り曲げて小柄の形状に仕上げるのですから、小柄の模様(図柄)は板の裏面(小柄の内部になる面)から打出すしか方法(裏打出)はありません。したがって、片手巻は地板嵌込方式を採用していない時代である事を覆すことは出来ません。

 

では、裏打出方式は片手巻以外はないのでしょうか。実は二枚張構造で裏打出方式が厳然としてあったのです。

うかつな事に少し前まで私は、裏打出方式はイコール片手巻という定説をずっと疑ってもいませんでしたが、裏打出方式の小柄に接するたびに、一つの大きな?を覚えていました。つまり、重量についてですが、地板嵌込方式よりはだいぶ軽いが、純然たる片手巻の重量より少し重い例をかなり体験していました。その結果、片手巻(裏打出方式)ではない重量で、地板嵌込方式としか考えられない重量と思って内部を調べると、結果的には裏打出方式であった事を往々にして経験しました。使用地板の厚さの違いか位に考えていて、裏打出方式は片手巻と言う考え方を根本的に疑った事はありませんでしたが、最近、片手巻ではなく、二枚張構造で裏打出方式が少なからず存在する事に気づきました。片手巻と思い込んでいた拙蔵品の小柄を調べると二枚張構造でも裏打出方式がありました。

すると、二枚張構造で裏打出方式は片手巻より古いのでしょうか。それとも新しいのでしょうか。または同時期なのでしょうか。絶対の確信はありませんが、片手巻から二枚張構造裏打出方式に変化し、それから二枚張で地板嵌込方式へ移行したのが順当かと考える(推測する)に至りました。
(文責 中原信夫)

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