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INTELLIGENCE

+ 大根図の目貫二題〜その1

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

今回は同図柄の目貫を2点お目にかけて、そのいずれが秀れているかを検証していきたいと思います。以前、本欄において同図柄の鐔を三面掲出して、その真偽をも含めてお話しをしましたが、今回は無銘であり同一作者でもないので、目貫そのものの製作年代と出来を判断するという、従来にはあまり例のない比較をやってみることにします。

 

さて、写真A・Bを見てください。両方共に大根の図柄ですが、どちらが秀れた出来になるでしょうか。

まず、AとBの違いがすぐに解るのは、Aには抜孔(ぬけあな)がありませんが、Bにはある点です。そして、A・B共に2本の大根を上手に組合わせ、重ね合わせた姿をデフォルメして、写実とデザインの調和をうまくとっています。さらにA・B共に、その外形はラグビーボールのような外形がとってありますので、目貫本来の使用目的からくる実用上の支障はなく、見事な形状ですが、図柄の煩雑さというものがより多く感じられるのは、Aでしょうか、Bでしょうか。つまり、大根の図柄ではなく目貫の図柄として活きているのは、どちらでしょうか。

正解はBです。Aは確かに、これ一点だけでみるなら秀れていますが、Bと比較すれば、図柄の力強さ、コンパクトさ、そして、人間の眼に写る形状としての優秀さはBといえます。当然、前述の抜孔もこうした見所、見極めに関連しています。つまり、Aには中心(図柄としての中心)が煩雑なので絞りきれないのですが、Bはその中心を大根の根と葉の付根付近にすぐに見つけられます。こうした見方をすると、Aは多くの見所がありながら焦点が絞りにくいのです。そしてBの大根はAに比べて誠に力強いですね。これが目貫の生命(いのち)であり、シンプルな図でありながら、却って力強く、そして躍動感や立体感も十二分に感覚として感じとれます。

 

さらに図柄という点からいうならば、Bがおそらく限りなくオリジナルに近いものと見なして良く、Aは、Bの写(うつし)の図柄の古い方に属する一つという見方も十分に成り立つと思います。また、この大根の図の写(うつし)や写の写などは、多く存在します。

目貫にしても、他の鐔、縁頭、小柄、笄にしても、その図柄をどのように表現するかが最大の課題であり、そのために膨大な下絵、つまり設計図を描き試行錯誤を繰り返すのです。勿論、紙や布が貴重な古い時代には、果してどのようにしていたのかは解りませんが、いづれにしても江戸時代と同様のプロセスを経なければ、このBのような図は出来ません。

さて、次回はA・Bの目貫の裏面(うらゆき)を見ていただいて、その経年数などについて触れていきたいと思います。
(文責 中原信夫)

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