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+ 返角(かえりづの)について〜その1

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

拵は種類としては多くありますが、色々と脚光をあびて登場するのは、鐔、目貫、小柄、笄であって、それ以外に縁頭もあります。しかし、栗形や鐺は全くといってよい程、話題に上がってきません。今回はそれ等以上に触れられた事のない、返角(かえりづの)について話をしてみたいと思います。

 

A-1を見てください。これは前々回に述べた打刀拵の返角を真横から写したもので、A-2は、真上から写したものであり、全体の形状が良くわかるものです。

返角とは拵を帯に指した時に、帯に引っ掛ける役目であるとされます。勿論、この返角がないというか、付けない方が理に叶っている拵も見かけますが、いづれにしても、拵の部分の中でもかなり大事なものですが、等閑視されてきているのが現状です。

 

さて、A-1の写真では、返角は向かって右から左へ少し曲がって伸びていて、その先端は鞘の表面とくっついてはいません。この先端と鞘表面との間にあいた間隔の中に、帯が入るというか、帯を挟み入れて鞘が移動するのを防ぐ、つまり鞘が前に出てくるのを防止しているとされています。つまり、ストッパー的なものです。

この先端がどの方向を向いているか、また、返角を鞘のどの位置につけるか、これが各種の拵によって少しずつ、又は、大きく違うのです。勿論、江戸時代になっては、藩ごとに違うとされていますが、その前に、まず剣術の流派によって根本的に違ってきますし、人間の体格、年齢による相違も大きいと思われます。さらに、時代による服、つまり腰に巻く帯の厚さと、幅にも大いに影響してくると考えるべきであり、時代劇などで役者が大小を指しているような不様な、また不合理な指し方はありません。つまり大小の全体の重量は恐らく、3㎏は軽く超えるはずであり、ただ帯に差し込んだだけでは安定しません。そのために下緒があるとされていますが、下緒については後日という事で。

 

A-1に写っている鞘表面と返角の間隔は2㎜ですから、2㎜弱の帯の厚さという事が、およそ推測されます。また、この鞘の栗型と返角(鞘の返角の接着所の左側)との間隔は9㎝程あります。打刀は、指した時にほぼ水平状態に調節しますし、返角の接着場所での鞘の幅は、3.6㎝であり、この幅の中央より少し下(棟方)に返角の接着所は設定してありますので、数学の三角関数でその帯の幅をおおよそ算出していただきだいと思います。

又、Aは返角の先端が鞘の表面から離れています。これを『立上』(たちあがり)と表現しますと、この立上がなく、先端が鞘の表面にくっついた形状もあります。昔から、この立上が大きい(間隔があいている)程、時代は古くなるといわれていますが、この通説の当否はともかく、次回ではこの立上が大きい例を紹介したいと思います。

なお、Aの鞘は、写真では茶色の如く写っていますが、本当は黒色で飴色に変化したというのが本当のところです。
(文責・中原信夫)

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