INTELLIGENCE
♯ 登録証・その2〜杜撰な管理と不始末
Copywritting by Nobuo Nakahara
前回に続いて登録証について書かせていただきたい。
まず、登録証は国の公文書である事を忘れてはならない。
さて、登録証の裏面には罰則まで明記されているが、その一つに名義変更がある。つまり、刀を入手したら決められた日数以内に名義を変更する届をしなければならないのであるが、果して全登録証の何%が規則通りにしているか、大いに疑問がある。
刀剣商の方はおそらく全て変更しておられると思うが、問題は愛好家、蔵刀家である個人であろう。中には律義?に名義変更届を出したら役所から“該当なし”などの返事があるケースも聞いたし、登録年月日に該当なしとか、果ては銘文に相違あり、または脱落あり等々があって、全く収拾できないケースも多い。中には全く返事を出さない役所もあり、問題のある変更届が役所に届いたら調書の間にその届出書をはさんだままで、その内に担当者が変わり放置されるケースもあると聞く。これは全て“大ザル法”のなせる結果の一つである。
さらに無銘の刀の処理は何とも処置なしであるのが実情。刃長と反などが全く同じものが、全国にかなり登録されている可能性は高い。今やオンライン化されて、該当照会が他所から来て、何本もそこら中で該当が出たら、もうお手上げである。せめて、中心押型でも残しておけば、ベターであったと思う。
因みに、登録の際、中心押型をとっているケースも実見しているが、全ての中心をSDカードにでも収めるくらいは、そんなに時間はかからない。今からでも始めるべきが本当と思う。
以前、某県の登録審査の現場を見た事があるが、審査員の不始末は後を絶たない。“これは軍刀(洋鉄など)だから通さない”などと言って×にする。そんな事を言わないで登録料を稼げば良いではないか。制度がなくならないというか、なくさないのなら稼いでもらった方が良い。また、軍刀か否かは市場に出てくれば、値段で見事に反映される。審査員の鑑識より市場の方が上である。
例えば鍛錬した地鉄か否かの区別は、私のレベルでも難しいケースがある。それをである、刀と模造刀を見別けられないので、その模造刀の柄から刀身を脱くべく、長時間にわたり格闘していたという情けない程の実話がある。模造刀は刀身が柄から抜けない様に接着してあるから仲々抜けない。その前に刀と模造刀をさえ区別出来ないのか。
ひどいのは、提出者の所へ行って審査員本人や、またはその意をくんだ業者が買い出すという守秘義務違反までやった例があり、そうした人達の中には日刀保の支部長や最近まで本部の幹部役員を任命されていた事実もある。こうした現状を皆さんはどの様に思われますか。ただし、全ての登録審査員がそうであった、そうであるとは思っていないので念のため。
(文責 中原信夫)