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INTELLIGENCE

♯ 朝令暮改

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

最近、(公財)日本美術刀剣保存協会が、平成29年9月には新しく東京両国にオープンする予定と発表した。これは誠におめでたい事であり、自己資本で全てまかなえると聞いているが、何かと費用がかかる事は否めない。多分、各協力団体や個人に応分の寄付という事を言い出すかとも思えるが、新しい建物になったので、保存、特別保存、果ては重要、特別重要の制度もこの際、名称を改めて、新しく審査をするなどとは言わないでくださいよ。

 

なぜ、こうした事を言うのかというと、日刀保の資金源は全部と言ってもいい程に審査に依存するからで、既に保存、特別保存への提出物件はおそらく出尽くしてくるはずである。確かに、未提出のものはある。しかし、やがて出尽くしてしまう。そうなると資金源はなくなる。そこで、名称を変えて新に審査をし直すという手が浮上してくる。

 

この手は日刀保には前歴がある。つまり、昭和四十年後半に、当時の日刀保は特別貴重(丸特)に疑念のあるものが混入している可能性があり、これを一掃するために甲種特別貴重(甲種丸特)制度を設けるとして審査を続行した。しかし、日刀保の宣伝文句とは全く相違して、その甲種丸特にもすぐに?が混入したのである。これを受けて、昭和四十八年頃に全ての地方審査を打切ったのであるが、この打切には反対論が根強くあったが、強引に中止した。その理由は、もう未審査物件は殆んどなくなったとして、本部審査のみとして地方審査は中止したと建前的にはなっているのだが・・・。

 

これを受けて、村上孝介先生は昭和四十九年三月末をもって、日刀保の理事・常任審査員を辞され、刀苑社主催で地方審査を始められたが、これを見た日刀保はすぐに地方審査を再開したのである。未審査物件が殆んどないという理由で地方審査を中止するとした、舌の根も乾かないうちにである。それに輪をかけて、村上先生の地方審査日程が発表されるや、その審査日の少し前に同じ地域で先に審査を強行するという荒技までやってのけた。まさに嫌がらせ以外の何物でもない。さらに、刀剣商や刀工職方にまで圧力をかけ、村上先生への行動(審査提出)を圧迫したのである。これは事実であり、私も実際に体験済のことである。

私に言わせれば、日刀保の圧力に屈してしまった刀剣商、刀工、刀職もまるで宦官であろう。

日刀保のこの身替わりの速さはまさに天性のもので朝令暮改の典型である。
(文責 中原信夫)

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