INTELLIGENCE
♯ 日刀保(アメとムチ)
Copywritting by Nobuo Nakahara
以前、本欄において、日刀保の全国支部長会議での時、一人か二人の権力者のご機嫌に楯つくように歯向った(この方がまともで正当)支部長には、後日とんでもない仕打が待っていると書いた。
とんでもない仕打とは何かを書かないと、今の人達には全く理解しにくいかと思うので、一応概略を書いておく。それは、歯向った人の持物やその関係者の持物を重要・特重審査で落とすのである。
かなり以前では丸特や貴重刀剣まで×にしてしまう。つまり、「アメとムチ」である。ただ、私の言いたい事は日刀保の一人か二人の権力者も悪いが、刀の愛好家(支部長も含めて)も決して100%良いとは言えないのである。何故なら、一人か二人の日刀保の権力者に歯向っていない人達(愛刀家・刀剣商)の提出した刀が出世して、重要・特重に指定される。これはその人達にとってはまさに「アメ」である。併し、その重要・特重になった刀が果たしてその格付に相応しい刀であったのか。もし、ふさわしくない刀が出世したなら、「アメ」ではなく、それを後で買った第三者にとっては「ムチ」になってしまう。つまり、打出の小槌(自分にとって甘い甘い「アメ」)にするため一人や二人の権力者におもねったとしか考えられない。
では、歯向った人達(という程多くはないのが実情)は二つの立場に別れる。一つは一切、出世のための審査に提出しないが、其の後の支部活動や刀の普及には積極的にはなりにくい。中には刀ではなく、日刀保に対して幻滅を感じてやめてしまう人もいた。そうした現象が刀の社会を精神的に堕落させた。
もう一つは、気に入られている方面の人に頼んで出世させたりしたのもあり、何ともコメントしようがない。当時は今のような不況ではなく、経済が上向きそのものであったから、致し方ない一現象であったのかも・・・。但、その「アメ」の出世物件が、今や売りに出されて、様々な現象を引き起こしている。値段も下落し、刀に全く愛情のない人達からは「刀の社会は本当に汚い・・・」などと囁かれては、後始末をさせられる私達はどうすりゃいいのであろうか。こんな貧乏クジを引かなければいけない事に情けなくなる。「俺たちより前の奴らはいい思いをしたのに、どうして俺達は・・・」とボヤきたくなる。でも刀に罪はない。人間全体の罪である。
(文責・中原信夫)