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INTELLIGENCE

♯ 刀の地位向上

Copywritting by Nobuo Nakahara

 

最近の刀ブームで、街の書店にも刀の本が多く並べられて、簡単に、そして安価に入手できるようである。別に文句をいう訳でもないが、出版社にしても解説者、編集者にしろ、はっきりいって素人であり、本当の点には言及できないし、また、そんな事は想像もしていない。内容的にはウソと作り話に少し本当の事を織り交ぜた内容といえば失礼に当たるかもしれないが、それが私の実感である。

また、美術館への入場者も増え、刀の展示室には多くの人達、特に女性が多いという。決して拒否するべき事ではない。但し、戦後は、刀はマイナーな存在となり不当な扱いと、世間的理解度の低さや、いわれなき偏見の目で見られてきた事は、誠に悲しむべき事態である。このような事態が改善されて、一般の方々に刀が正当に受け入れられ、更に日本全体に普及する事を心より願っている。

 

さて、戦前は、刀という存在が何の支障もきたさなかった。また、自然に日本社会全体にとけ込んでいた刀が、なぜ戦後、かくも急に反社会的な存在に近くに置かれたのか。この最大の原因にアメリカがある。経済力でのみ世を渡り、支配してきたのである。明治以来、日本人自体の自国の美術品、文化に対する評価が偏ってしまったし、むしろ日本人自身が偏らせた感が大きい。

日本のみならず、文化文明の一番のバロメーターである美術品、その中でも刀はトップクラスである。これを正確に正当に評価されるべく、我々は一層の努力を怠らず行うようにしなければならない。その特効薬はなかなか見当たらないが、刀が日本社会で自然に受け入れられ、正当に評価される事しか残されていない気がする。それにはまず、御役人の再教育が求められる。
(文責・中原信夫)

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