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INTELLIGENCE

♯ 刀剣界のスタンス

Copywritting by Nobuo Nakahara

いつの頃からであろうか、刀や小道具を安易に、かつ負担が少なく手に取って見られるという感覚が強くなり、蔓延していったのは・・・

つまり、戦後の刀剣愛好の一般大衆化である。戦後、日刀保が設立されて以来、昭和48年以降の刀剣ブームになるにつれ“大衆化”という傾向が強くなり、思わぬ副産物的精神を作り出してしまった。私の師・村上先生も機関誌『刀苑』等に、そうした大衆化を是とする考え方をしておられるが、私はむしろ大きな落し穴であったと感じている。これは他の日刀保の先生達も同様であるが、これを私が咎める資格はない。はっきりいって致し方のない、ひとつのプロセスを通過したという事と捉えるしかない。

 

問題は、これから大衆化を進めるのか、否かであって、但し、大衆化を進めるなら、その精神性(理念)をキチッと持ってもらう、むしろ持っていなければならないという事を宣言・実行すべきである。逆に大衆化に“ノー”という立場、スタンスをとるなら、刀剣界そのものの維持と伝承には、莫大な負担が各々の愛刀家一人一人にかかってくることになる。

 

その好例が(公財)日刀保機関誌『刀剣美術』である。年間12000円で毎月1回配布される冊子。恐らく、この料金では経費をペイする事は無理であろう。もっとも、広告収入があり、昔と違って送料が格段に安価になったが、しかし、大きくプラスにはなっていないと思う。例えプラスになっていても、本質的な問題は会員購読者の意識である。「12000円は高い」というような考え方は、はっきりいって根強いものがある。つまり、冒頭で述べた意識のレベルの問題である。実際、こうした精神レベルが今の刀剣界の大問題であるという認識を持たないと、いくら普及させても元の黙阿弥になってしまう。

加えて言わせていただければ「刀剣小道具の趣味者は、少なくとも精神的にハイレベルであって欲しい」というのが私の願いであるが、本来は全く当たり前のことでもある。
(文責・中原信夫)

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