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太刀・刀

石堂運壽是一精鍛作之 安政五年二月日 仙䑓渡邊氏源久道佩刀

商品番号 : B-077-190

江戸後期・幕末 武蔵 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:75.7 cm 反:1.2 cm 元幅:2.78 cm 先幅:1.82 cm 重ね:0.80 cm 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は化粧に筋違。
地肌
小板目肌良く詰んで精美な肌となる。刃寄りは柾心に流れ、鎬地、棟寄りは柾目になる。
刃文
沸本位で直調の弯が交じった小乱。匂口は締まり心にほつれて刃中沸づき、小足が所作する。金筋、稲妻が所々に現れ、地景が明瞭に出る。
鋩子
直調に入り小模様に乱れて掃き掛ける。返は深く約二寸ほどある。

白鞘から抜いて最初に感じるのは、その細身の姿でしょう。スーッと延びて2尺5寸はある長寸の刀姿は独特です。反も浅く振り回す刀ではなく、刺す、突くといった用法を考慮して作られたと想像できます。異常に長い菊池槍の様な感じがしないわけでもありません。でも、本刀には気品が感じられます。精美に光る地肌のせいもあるのでしょうが、何処となく端正で長身のスマートな美男子(女性に例えたら背筋の伸びた切れ眼のモデルさん・・・誤解されそうなので女性の例えも入れます)。それでいて、さも危険な匂いも併せ持ち、本刀が作られた時期・幕末の戦慄が漂う中に哀愁さえ感じる一振です。

スマートな姿といっても重ねは厚く、幕末の実戦向きの本刀。案の定、所持銘が刻られています。細身の姿もこの刃文も所持者の要望でしょう。運壽是一の刃文は圧倒的に備前伝の丁子が多く、直調の刃文はほとんど見かけません。刀姿も含めて珍しいと言えば珍しく、是一の印象を覆す一振です。そんな彼にこの刃文を焼かせたのも大胆ですが、その期待以上に応えた是一はさすがです。さらに真っ正直な直刃と違って、本刀の刃文は弯れ交じりの小乱に近く、狭い元の焼幅から上に向かって徐々に広く焼いた造込・・・匂口はほつれて小足が所作し、沸出来ながらしっとりとした深みがあり、刃中も小沸が厚くついています。上手です。それだけではなく、地肌には至る所に金筋と稲妻が見てとれ綺麗な地景となって刀身に華を添えています。通常は地鉄の肌目に沿って出るものですが、本当の場合、柾心の地肌を無視するかのように縦横に駆け巡っているあたりは見所の一つです。こうして見ていくと、相州備前が得意だったとする是一の特徴が随所に出ていることがわかります。しっかりと自分の良さを出しながら、要望にきっちりと応えた彼の巧さを褒めるべき一振と言えます。余談ですが、作者の七代・運壽是一は所持銘の作刀が意外に多く、当時の人気刀工だったことが伺えます。江戸石堂の中で随一とされる彼の評価は本刀を見ても納得です。

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