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太刀・刀

肥後守國康

商品番号 : B-092-245

江戸前期 摂津 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:70.6 cm 反:1.1 cm 元幅:3.31 cm 先幅:2.05 cm 重ね:0.80 cm 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は筋違。
地肌
小板目肌に板目交じり、総体に良く詰んだ整った肌合となる。鎬地・棟寄りは詰んだ柾目。
刃文
焼幅広く、箱風と五の目がランダムに連なった丁子乱。匂口は小沸出来でやや締り心、丁子の足は長めで、金筋・砂流がかかり、飛焼もある。
鋩子
直調に入って少し乱れて、先は小丸となって、やや深く返る。
肥後守國康

肥後守国康、言わずと知れた大坂新刀の祖・河内守国助の三男です。兄弟には二代河内守国助(中河内)、武蔵守国次、 伊勢守国輝もいます。いや〜堂々たる刀工たちですね。中でも中河内は拳丁子で有名ですが、本刀にもその拳丁子の特徴というか要素がぎっしりと詰まっています。
刃文の形状は京焼出に始まって、腰の開いた五の目丁子がランダムに連なって大模様に展開します。その五の目丁子が重なり合い箱風となっている様は、中河内の丁子に非常によく似ています。異なるのは焼頭の形状かもしれません・・・中河内の場合は拳丁子の頭がそのまま刃文の形になって二連・三連となって現われますが、本刀のはゆったりとした五の目のラインの下に拳丁子の匂口があり、その数も所作も控えめです。代わりに金筋・砂流、匂崩(葉)といった所作が随所に現れ、また違った賑やかさがあります。この金筋・砂流の刃文の風合いは親国助をみているようで、まるで親国助と中河内の特徴を合わせたかのような印象です。親国助は戦う刀、中河内は見せる刀、その合いの子のような本刀・・・親子そして一門の中での編み出された作ですから、こういう刀が生まれるのも必然なのでしょうが、特徴なり家伝が融合していくプロセスは面白いものです。

その見せる刀の要素が2つ見受けられます。鎺元から6寸上あたりに丸く小さな飛焼があります。それも表裏にほぼ同じ位置・・・まるで濤瀾刃の飛焼のようです。これは偶然ではなく、意図的に焼いた感があります。もう一つは表裏の刃文が揃っていること。これらは時代から考えて、まさに見せる刀を意識した所作だと強く印象を受けます。新刀特伝とはいえ、ちょうど見せる刀へと各刀工たちが試行錯誤を始めた時期をこの刀からは強く感じられます。
本刀の姿は反少なめ、元先に差があり中切先、寛文新刀の姿そのものですが、中河内よりも親国助に近い感があります。ほぼ定寸ながら重ねは厚めで、見た目は優しくも手にした感じは力強さがあります。平肉がついて状態もよく健全度は申し分ありません。
古風ながらも新しい試みが散見できる本刀、中河内の陰に隠れて目立ちはしませんが、兄に負けじと劣らぬ技を見せつける国康の上出来作。技もそうですが、その研究心というか作刀に対する前向きな姿勢も同時に感じられる一振です。

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