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太刀・刀

但馬守法城寺橘貞国

商品番号 : B-112-276

江戸前期 武蔵 特別保存刀剣 白鞘・拵付

売約済

刃長:75.3 cm 反:1.10 cm 重ね:0.79 cm 元幅:3.11 cm 先幅:1.98 cm 重さ:830 g 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は勝手下。
地肌
板目に小板目交じり、杢目も交じる。良く詰んで精美な肌合いになる。鎬地は密に詰んだ柾目になる。
刃文
焼幅がやや広い中直調に五の目の足が交じる。匂口は沸本位でふっくらと深く、刃縁が柔らかくほつれる。砂流風の所作もある。
鋩子
太い沸の筋が直状に激しく掃き掛ける。表は返が寄り、裏は滝落状に深く返る。
但馬守法城寺橘貞国

典型作という言葉はあまり使いたくはありませんが、本刀に関してはそうお伝えするのが正解かもしれません。直刃状の匂口に五の目の足が入り、まさに言われている特徴そのままで貞国らしい一振です。その僅かに弯れた刃文は綿毛のような柔らかさと深みがあり、元から先まで一様に描かれ怒つい刃はどこにも見当たりません。もちろん、匂崩や叢沸もなくふんわりと優しい沸筋が和紙に滲む薄墨のように拡がります。これだけだと変化が少なく物足りなく感じるかもしれません。しかし斜めからの灯が匂口に映り込んだ瞬間、その様相は一変します。刃先に向かって五の目の小足が朧げに延び、綿毛で出来た草原のような光景が浮かび上がってきます。何とも優しくファンタジーな印象。目を凝らせば、五の目で構成された小足が連なり動きのある匂口が展開しているのです。

昔から貞国の刀は虎鉄に化けると言われる有名な話ですが、なるほど、この刃文が巷で囁かれる噂話のネタというわけですか・・・本刀の刃文を見ればそれも頷けるのかもしれません。確かに似ています。強いて言えば地肌も似ていて、小杢目と大肌が交じるあたりがそうでしょうか。その地肌に沸本位の直刃に数珠刃状の五の目。総体に虎徹のような刃文と言われればそう見えてきます。しかし本刀は、沸の出方が少し大人しく優しい感じ。数珠刃と称される五の目は、揃い気味の虎徹に較べてやや不整で、間隔も狭い感じがします。仔細に見れば虎徹ではなく貞国の作であることを実感させられます。特に鋩子の所作は独特で、横手筋から数本に分かれた太い沸筋がそのまま直状に伸びて、表の返は抉ったように寄りながらここにも筋状の所作が・・・大袈裟かもしれませんがまるで九尾の狐状態。裏は滝落状で、深く返っています。この所作が非・虎徹であることを示しています。言い換えれば、虎徹にされなくて済んだ? それにしても、単に似ているというだけで貞国にも虎徹にも迷惑千万な化け話です。今もどこかに「貞国虎徹」が濡れ衣を着たまま不本意に讃えられているのでしょうね。「いや、おれは貞国だ!」という無言の嘆きが聞こえてきそうです。奇しくも作域が似寄り、時期同じくして武蔵という同じ場所で作刀した両雄、重ね合わさった偶然が較べられ都合よく弄られたのは、必然なのかもしれません。

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