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太刀・刀

武州住三興

商品番号 : B-116-290

江戸中期 武蔵 特別保存刀剣 白鞘・拵付

売約済

刃長:68.1 cm 反:1.80 cm 重ね:0.62 cm 元幅:2.65 cm 先幅:1.87 cm 重さ:630 g 目釘孔:2つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は筋違。
地肌
小板目良く詰み無地風の肌が柾心に流れる。鎬地は柾目になり、移が現れる。
刃文
焼幅頃合いに、小沸出来の中直刃調に小乱が交じる。匂口はふっくらと深く刃縁が締まる。喰違刃風の所作があり、金筋風の所作もある。
鋩子
直調に入って先が尖り気味に掃掛け、やや浅く返る。
武州住三興

浅い弯れが交じった中直刃に見えますが、匂口には深い小沸が織りなす光景が秘そんでいます。正面からは締った匂口がよれながら延びているようにしか見えません。小足が出ているのかと斜めから灯りをかざせば、そこにはふっくらと深く拡がる小沸の景色が・・・帯状ではなく刃寄りに向かって淡く柔らかなグラデーションの馴染む様子が見てとれるでしょう。おう、スプレーで描いたかのような柔らかみを持った匂口、思わず頷きます。良く見れば刃縁の稜線は弯れというよりは小乱風に変化しており、その形状に沿って喰違刃や二重刃風の所作があるのがわかります。正面から見て中直刃の匂口が締まって見えただけのシンプルさは単なる見せかけ、本質は真改ばりの深い匂口にあるようです。ただ、一個所、指裏の下方に五の目風の所作があり、これが作位の高い刀工との違いなのかもしれませんね。それでも見方によっては、ワンポイントデザイン(遊び)であり、正面からの視覚には映りません。それより褒めるべきは、刃縁の冴えでしょう。この冴えがあることで、正面からの刃文は素朴な中直刃、しかし匂口の出来は深く変化に富んだ上出来の所作・・・鮮やかなコントラストの光景が形成されるのだと思います。

体配は細身のせいか、末古刀とも寛文頃とも、そして元禄頃とも言い切れない姿。注文打と思われ、反が普通に見られる腰反ではなく鳥居反に近く、古風とも言える姿をしており古刀の写しでしょうか。そういえば、移も出ています。姿は古備前の写かもしれませんが、匂口は新刀特伝の深い匂口をしていて、妙にマッチしているあたりが独特の印象を与える一振です。少し残念なのは、約1センチ強ほど区送をしている点、そして鎺元上に小さい疵があります。疵は鑑賞に差障りありませんが、敏感な方はご確認を。作者は武州住三興。江戸石堂派の藤原三興です。石堂ですから、本刀に移が出ているのも頷けます。三興は初・二代がおり、初代が正保頃、二代は元禄頃。本刀に見られる新刀特伝の匂口を考慮すれば、二代とするのが自然かもしれません。江戸石堂派とはいえ、初・二代とも現存刀は少なく珍しい一振で、当店も初見の刀工です。どなたか三興の作をお持ちであれば、ぜひ経眼したいものですね。
本刀にはちょっと風変わりな拵が付いています。鞘が独特で、黒漆の地に研出の丸い鮫皮を貼り付けてあります。指表側にはその丸い斑紋に七つの文字が書かれているのですが、残念ながら当店の知識では読めません。色は地味ですが派手です。鐔は鉄槌目地に車輪に絡まった蔓と葉に蟷螂と興梠が描かれ、これは源氏物語の夕顔図をもじったものかと。縁頭は赤銅地七子地に竹と蝸牛、そして目貫は赤銅地の団栗図・・・どれもイメージ的には近い感じもしますが、揃っているわけではありません。とはいえ、みな金色絵でそれなりに派手さはあります。当店などは、鐔に描かれている赤銅が施された蟷螂のリアリティさに驚いています。

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