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太刀・刀

金房兵衛尉政次

商品番号 : B-119-S-293

室町後期 大和 特別保存刀剣 白鞘・拵付

売約済

刃長:62.0 cm 反:1.60 cm 重ね:0.74 cm 元幅:3.23 cm 先幅:2.26 cm 重さ:698 g 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は勝手下。
地肌
板目に杢目交じり、やや肌立ち心で流れ気味の肌となる。鎬地は柾目心となり、移が現れる。
刃文
焼幅広く、小沸出来の乱刃で、箱風もあれば腰の開いた五の目風の乱もある。匂口は締り心で、飛焼、湯走風の所作、匂崩、沸崩が頻りに所作し、尖刃も交じる。
鋩子
本刃が乱込み、匂崩を伴ってやや浅く返る。
金房兵衛尉政次

これぞ戦国期の刀って感じがします。利刀造の片手打姿で長さも二尺半寸、中心もふっくらと肉がついて姿だけ見れば末備前と見紛うほどです。重ねも厚く平肉がついた頑強な造込で、当時の武士にとっては頼もしく、まさに実戦に即した刀と言えます。そこに焼かれた刃文もまた戦乱の時代を象徴するかのような喧騒さがあります・・・良くも悪くもこの荒々しい刃文がたまりません。
指表は元から物打までが箱風と腰の開いた五の目が焼崩れて、そこへ匂崩が散らばり、絡まって解けなくなった毛糸のような激しい状態に。物打より上は尖り気味の弯れに匂崩が点在しています。指裏は、表に較べて大人しげですが、中程は形容しがたい箱風の焼崩から小足や匂崩が所作し、飛焼や湯走風の所作も交えます。物打より上は、やはり弯れ気味の乱に匂崩が点在し鋩子へと続いています。表裏の波紋はバラバラで自由奔放、でも尖刃や解れがあるとはいえ刃縁は冴えており、移もきちっと現れています。隠れた所作だってあります・・・これだけ激しく煩雑な匂口であれば、砂流や金筋といった縦の所作があっても不思議ではありません。末古刀とはいえ本刀も大和伝に入るわけで、二重刃風らしき?個所はあるものの、刃中に縦の所作は出ていません。あるがままに焼いた印象が強い本刀、縦の所作が影を潜めたのは偶然なのか、それとも・・・これを考えると、まさしく末備前風の所作。確かに焼崩の形状は似ていませんが、腰の開いた五の目乱の変形版? でなく、番外版でしょうか。あ、備前に較べてはいけませんね。金房は金房としてちゃんと作域があるのですから。本阿弥光遜の「刀の掟と特徴」にも焼崩をはじめとした本作の匂口の特徴そのものが書いてあります。

利刀造の片手打姿も相俟ってか、激しい刃文展開と末古刀らしい風合いが見所と言っても良い本刀ですが、その健全さも忘れてはいけません。身幅が広く踏張もしっかりと残され、切先の松葉角も見て取れます。結構名の知られた作者の金房兵衛尉政次は初・二代いますが、銘振から初代の政次だと思われます。時代は天文頃。この頃の大和物はありそうで意外に少なく、あっても状態が芳しくない作が多い中、本刀は姿も地肌も好ましい状態で残っています。この荒々しいジャジャ馬のような本刀、力強いその姿のままで後世に残していきたいものです。

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