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脇指
兼房
商品番号 : C-047-S-197
室町後期 美濃 保存刀剣 白鞘
売約済
刃長:32.4 cm 反:0.45 cm 元幅:2.82 cm 先幅:2.32 cm 重ね:0.52 cm 目釘孔:2つ
- 体配
- 平造、庵棟、生中心、鑢目は檜垣。表裏に棒樋を中心の中ほどまで掻流。
- 地肌
- 板目に杢目交じり、少し柾心に流れる。良く詰んで総体に明るい肌となり移が出る。
- 刃文
- 匂出来で腰の浅い五の目乱に弯交じり、指裏にいくつかの小さな飛焼がある。匂口はやや締まり心で、小沸がほつれ気味にふっくらとし、所々小足が所作する。
- 鋩子
- 弯から小刻みに乱れて、やや地蔵風の小丸となって深く返る。
やや先反気味の姿で優しい感じのする、いわゆる寸延び短刀です。フクラもあり健全な方ですが、切先の棟筋は僅かに伏せています。身幅は広くも狭くもなく頃合い、今の姿から打卸の姿を想像すれば、優雅なラインの刀姿が浮かび上がります。重ねは元々薄めで、研溜の所で0.55センチ、鎺元(棟区)で0.52センチ、その差わずかに0.3ミリ。室町後期の末古刀とはいえ、十分に残っている健全度です。
残っているといえば中心の鑢目もそうで、明瞭な檜垣の鑢目が見てとれ、線の強弱から複数の鑢を使い分けていることがわかります。中心仕立て、特に銘と鑢目は刀工が自分の存在を示せる唯一の場所。丁寧に施すのが当然で、それが今に残されていること自体評価すべきで、愛蔵してきた人たちもまた同様です。
その檜垣鑢目からも分かる通り、本脇指の作者はそれなりに名の通った美濃の兼房。なんだ氏房じゃないのか、などと名前や場所だけで評価するのはどうかと・・・末関物なので地肌が荒れ気味かと思いきや、本作は杢目交じりの板目がよく詰まれ明るく精美な肌合いです。肌立つというよりしっとりと地肌模様が表れ、それが流れ心に続く様がまた良く映ります。意外なのは末関によく見られる棟寄りの強い柾目が見られないことで、刀身総体に流れ心の板目に鍛えられています。匂口の刃縁も崩れや叢はなく、刃先側にほつれ気味にふっくらと沸付く刃文は優しくもあります。指表の切先側と指裏の中程から上に淡く小さな飛焼もあり、控えめに所作する小足も出て、決して単調な刃文でもありません。
それにしても乾いた感じのしない地肌です。かといって沈んだ黒味の肌でもなく明るく冴えて目に映ります。そんな穏やかで粗さのないちょっと風合いのことなる末関の本脇指。時代は永正から永禄の間と思われ、おそらく天文頃の兼房ではないかと推測しています。でもこの出来と刃文、氏房かもしれませんよ(当店の言うことを鵜呑みにしてはいけません)。