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脇指

脇指

摂津住康永 庚戌 寛文十年八月日

商品番号 : C-050-213

江戸前期 摂津 保存刀剣 白鞘・拵付

売約済

刃長:57.0 cm 反:1.0 cm 元幅:3.20 cm 先幅:2.15 cm 重ね:0.70 cm 目釘孔:2つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は筋違。
地肌
鎺元が少し板目、それより先は小板目、良く詰んで精美な肌となる。鎬地・棟寄りは柾目となり、移がある。
刃文
大坂焼出に始まり、中程までは弯に緩い五の目丁子乱、中程より先は腰の開いた五の目丁子乱。砂流風の所作があり、指裏に小さな飛焼が一個所、そして棟焼風の所作が出る。
鋩子
直調に入り、弯れ気味にやや深く返る。

多々良長幸の師匠という売り文句で、褒められ持ち上げられてしまうことの多い康永。本人にとっては不本意な評価ではないでしょうか。わざわざ長幸を持ち出さなくとも、康永は上手いのです・・・本脇指を見る限りは。まあこれも、高名なタレントに埋もれてしまう低知名度たる康永の宿命なのかもしれません。なので、少し依怙贔屓して本脇指を紹介することにします(居直った主観です、信憑性にご注意を)。
刃文は大坂焼出から始まります・・・なにせ、大坂石堂の一人ですから。匂口はかなり深く小沸出来というよりは匂出来、刃縁には沸こぼれや崩れはなく極めて上手く焼いており冴えた稜線を見せています。その刃文は大人しく見えて多彩な形状が交じり合っていることが本脇指の特徴と言えるかもしれません。尖刃、場所によっては拳丁子風、足長丁子に小丁子、坂丁子・・・これらの所作が腰の開いた五の目乱に沿って展開します。非常にランダム、あるいは自然というか、成り行きに任せた匂口といった印象です。加えて、金筋・砂流が働き、さらに棟焼風の所作、一個所には小さな飛焼さえあります。もちろん、移もちゃんと出ています。個々に見ていると、一見、無秩序な焼に思えますが、これが刀身の風景として俯瞰すればまとめ上げている上手さを感じさせます。おそらく・・・意図的でしょうね。
複雑に見えて自然な刃文をどう評価するかは好みの問題ですが、では地肌の出来は・・・いや〜綺麗です。よく詰んでいます。鎺元に地景風の所作が出ているため、元の方は板目と書きましたが、総体に密な小板目肌です。鎬地・棟寄りは柾目心ながらやはり細かく詰んでいます。

造は二尺に一寸足りない長脇指。年紀にもある通り寛文新刀を地でいく刀姿です。年紀のある康永の作では少ないようで希少性もありますが、干支の年紀も刻っているのは初見です。和暦とはいえ重複して刻ることに何か意味があったのでしょうか? それともよくある例なのでしょうか。ともあれ、地肌、焼といった品質の面からは上出来の一振で、多々良ウンヌンという前に、本質を捉えて評価すべき作です。因みに本脇指は康永が河内守を受領する8年前の作、そういう意味では色々と模索していた中での作かもしれません。そんな本脇指は現在、保存刀剣ですが特別保存にしてあげないと可哀想と思える出来・・・・でも当店ではこのままでご紹介します・・・だって単純に高くなるだけですから。もちろん、高位をお望みの方にはご支援をお約束いたします。
拵は一作物の金具で誂えた半太刀拵。金具類、小柄、割笄、縁頭は四分一、鐔が磨地の赤銅。すべてに「丸に笹竜胆(ささりんどう)」家紋があしらわれ、鞘にも施されています。この拵で異なっているのは目貫だけで、金色絵が施された猪です。決して古い作ではありませんが、ずいぶんとこだわって作られた拵のようです。

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