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脇指 “うもれし”一振

脇指

加州住陀羅尼橘勝国作 享保元年八月日

商品番号 : C-052-U-216

江戸中期 加賀 保存刀剣 白鞘・拵付

売約済

刃長:39.1 cm 反:0.76 cm 元幅:2.82 cm 先幅:2.20 cm 重ね:0.63 cm 目釘孔:1つ

体配
平造、庵棟、生中心、鑢目は筋違。
地肌
細かくよく詰んだ総柾目で、棟寄りに少し板目に流れる個所がある。
刃文
鎺元から約10cmぐらいまでは揃った五の目、それより先は中直刃で僅かに揺らぐ。途中物打辺りに喰違刃風の所作がある。沸本位の匂口はふっくらと柔らかく、ややほつれ気味になり、金筋・砂流が肌目に沿って出る個所がある。
鋩子
掃き掛けて小丸となり、返は浅い。

いつも思うことですが、この陀羅尼(だらに)という響きを聞くたびに、なんか神秘めいた密教的なイメージにとらわれてしまうのです。謎めいた刀工群とでも言ったらよいか(当店だけの印象なので、聞き流してください。)・・・しかし加賀では地元を代表する刀工の一つ。当の陀羅尼派はそう思われることには心外でしょうね。
本脇指は年紀からみて四代・陀羅尼勝国。歴代の勝国の作風は美濃兼元同様の三本杉を焼くことが特徴とされていますが、本脇指はどうでしょうか。焼始めから刃長の約四分の一ぐらいまで、頭の揃った小五の目です。三本杉ではなく尖刃も交じりません。ただ、風合いが何となく似ています。おそらく三寸ちょっとの領域に三本杉を焼くには間隔が短すぎるのでしょう。アクセントになる高い杉の頭が2〜3個しか作れず様にならないなら、揃った頭にすれば続く直刃にすんなりと馴染むと考えた、と思うのですがいかがでしょう(的外れな推測かもしれません)。その前に、本脇指はちょっと風変わりな刃文をしています。かなり意図的な形状ですが、突拍子もない奇異な刃文には映りません。ユニークながらもこれはこれで有りだな、と好印象さえ持ってしまいます。

体配は平造で反が強めの古風な姿、少し細身ですが室町後期から江戸前期にかけて美濃でよく作られた小脇指に似ています。系統的にも地域的にも美濃に似るのは頷けるのですが、本脇指は享保の作。伝来の作風を受け継いでいるとはいえ、この古風な姿は注文でしょうか。そこに美濃風の五の目に直刃を組み合わせた斬新な刃文・・・この刃文のデザインを採用したことが江戸中期の作であることを物語っているとも言えます。
匂口は崩れも叢もなく上手です。刃縁も冴えています。総柾目の詰み具合はかなり細かく精美な肌を見せていますが、棟側に僅かに板目状の個所があり、この評価は皆さんのご判断にお任せします。それと、ごく小さな疵が棟に一個所、数ミリの鍛え疵(割れ?)が見えていますが、鑑賞には問題ありませんがご報告しておきます。

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