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脇指

脇指

賀州金澤住人兼巻作 寛永十二年五月吉日

商品番号 : C-055-232

江戸初期 加賀 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:46.1 cm 反:0.6 cm 元幅:3.10 cm 先幅:2.27 cm 重ね:0.67 cm 目釘孔:3つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は筋違。指表に梵字と護摩箸、指裏に梵字と素剣を鎺元から中程に彫る。
地肌
小板目肌よく詰み、精美な肌合いを見せる。刃寄りは柾心に流れ、鎬地は柾目になる。
刃文
焼幅やや狭く、小沸出来の中直刃調。匂口はふっくらと柔らかく、刃先側に小沸が深く所作し微塵な小足が頻りに働く。
鋩子
直調に入り小丸となり。表は少し弯れて、裏は滝落風になり、深く返る。
賀州金澤住人兼巻作 寛永十二年五月吉日

柔らかな匂口が鎺元から切先、そして鋩子の返まで続いています。刃先に向けて小沸出来の深い調子が、崩れることなく焼き上げていますが、刃文としてみれば単純な中直刃にしか見えません。しかし、匂口を灯りにかざせば、その柔らかく深い小沸の様が浮かび上がってきます。厳つい個所は全くありません。刃先側が柾心に流れた地肌に沿ってほつれれた所作に加え、控えめで太めの小足も絡み、もわもわ〜とした綿の線を描いたような匂口の印象・・・やさしく柔らかいのです。姿は慶長・元和頃に多い反浅く元先に差のない造で、シャープで端正な印象をしていますが、しっかりとした姿に見えるのは、鎬が広さにあるのかもしれません。焼幅も狭めで、ちょっと独特の見え方・・・新刀らしからぬ新刀、末古刀の匂いがする新刀・・・新古織り混ざった感じで姿の区分けが混乱する一振です。
そんな個性ある姿に、梵字と素剣、護摩箸を彫ったのは、やはり中直刃だけだと景色が寂しかったのか、色をつけたかったのか。ある意味それは正解だったようで、本脇差の魅力を増幅させる効果はそれなりに現れていると当店は思うのですが、皆さんの評価はどうでしょうか。龍などの複雑で濃密な彫ではなく、簡素な彫にしたことも良かったと思います。ただ、この彫は同作なのか別人または後彫なのかはわかりません。

作者は兼巻(二代)、名の通り美濃系統ですが、初代が加賀へ移住し、本脇差の二代は金沢から小松に移ったものの加賀で作刀した刀工ですから、越前刀工の一人です。越前には兼若や陀羅尼勝国が有名ですが、兼巻もそれに劣らず評価された刀工だったようで、金沢から小松に移ったのも隠居した前田利常に召されてのこと。隠居したとは言え前田利常は元は大大名です。兼巻の力量を推し量るには十分すぎる事実です。本脇差は小松に移る5年前、寛永十二年の作。まだまだ実用の刀の時代、古さと新しさが混在する中で兼巻も試行錯誤しながら作った一振りなのかもしれません。

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