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脇指 “うもれし”一振

脇指

藤原吉綱

商品番号 : C-059-U-240

江戸前期 山城 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:53.7 cm 反:1.0 cm 元幅:3.16 cm 先幅:2.20 cm 重ね:0.72 cm 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は大筋違。
地肌
小板目肌に板目交じり、よく詰んで精美な肌となる。鎬地は柾心に流れて、移が現れる。
刃文
焼幅広く、大五の目丁子の単独と連続した山がゆったりと連なる。匂口は沸本位で深くふっくらとし、金筋・砂流が出て沸崩と尖刃が交じる。長い棟焼風の所作もある。
鋩子
直調に入り掃きかける。返は深く棟焼風の所作に繋がる。
藤原吉綱

本脇差の刃文は、どう伝えたらよいか悩ましい状態というか所作というか・・・刃文自体は大五の目の丁子乱で、腰の開いた単独の山とそれが二つ連なったものがランダムに展開する乱刃で、新刀特伝では珍しくない形状です。ただ、匂口はかなり複雑で、長短の丁子の足に金筋・砂流が絡んで沸崩(葉)風になったり、ゆったりとした谷の下にも砂流風の小沸の筋が出て、まるで二重刃のごときに見えたりします。焼頭に目を向ければ、末備前風の沸崩に尖刃も所作し、煙込を伴った移へと続いていたりと、それぞれの所作がてんこ盛りの状態です。さらにこれでは終わらず、鎬地と棟には棟焼と思われるものが鋩子の返から繋がって、刀身の約半分くらいまで続いているのです。おまけにその焼の中に長い稲妻(金筋)がウネウネと光っています。こんな匂口ですが、けっして叢沸にはなっていません。ふっくらと深く刃縁も冴えています。手にして正面から見れば、穏やかでゆったりとした五の目に見えるのですが、匂口を灯りにかざした光景は真逆の激しい荒波のようで、そのギャップが見所ともいえます。

作者は初代近江守忠綱の門人だった吉綱。忠綱は基本、備前伝です。本脇差もよく見れば備前伝の激しい刃文とみれば違和感はありません。強いていえば相州備前と言った手合いでしょうか。忠綱の門人である吉綱がこの刃文を焼いたのは不思議ではありません。もちろん、吉綱自身のオリジナリティを出そうとして出来たのが本脇差なのかもしれません。姿は反頃合いよく整った姿で、特に中心の肉置がふっくらと肉がついて好ましい造です。この手にした感触をみなさんも是非体感してほしいと思います。それにしてもコンパクトなこの刀身に、出したい所作を詰めに詰めこんだ本脇差はやりすぎの感もありますが、激しい景色が好きな方には的を得た一振かもしれません。十分に楽しめると思います。
ちなみにあまり見たことのない所作が本脇差にあることを報告しておきます。鎺元から研溜にかけて本来は見受けられない匂口があるのです。つまり焼出が研溜から始まっているということです。もちろん本脇差は磨上ではありません。ほぼ生中心の状態です。珍しい所作で、偶然に焼が入ってしまったのかわかりませんが、吉綱の気迫が中心まで及んだ結果なのかもしれません。吉綱という刀工は熱い男だったのでしょうか・・・

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