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脇指

脇指

近江大掾藤原忠吉

商品番号 : C-064-259

江戸初期 肥前 特別保存刀剣 特別貴重刀剣 白鞘(本阿弥光遜鞘書)

売約済

刃長:52.4 cm 反:1.7 cm 元幅:3.25 cm 先幅:2.26 cm 重ね:0.70 cm 目釘孔:1つ

体配
本造、庵棟、生中心、鑢目は切。
地肌
小板目肌を密に詰んで、無地風の精美な肌合いとなる。棟寄り鎬地は細かく詰んだ柾目。
刃文
焼幅広く、小沸出来の直丁子乱。匂口は締り心に匂崩を伴った小丁子の小足が頻りに所作し、刃縁が冴え刃中は沸づく。
鋩子
直調に入り少し掃き掛けて小丸となり、深く返る。
近江大掾藤原忠吉

巷で言われる通り、細かく詰んだ精美な地肌。透き通るような肌合いが印象的な四代・近江大掾忠吉の脇指です。思わず見惚れてしまう肌美人、麗しくも端正な刀姿を前に、なぜか怯んで一歩下がってしまう自分がいます(逆に、こっちが品定めされている気持ちになります)。気迫とか強さではありません、美しき女性を前にして臆する気分のようです。逆に、こういう刀を手にして、あれこれと鑑賞できることに感謝すると同時に、高名なる先代達に隠れがちな四代忠吉のうまさを実感させられる一振と言えます。
端麗なる地肌とは裏腹に、灯りにかざした匂口は全く相反する表情を覗かせます。手書きの直線のような微細な動きをみせる直調の匂口。刃寄りは綿毛の細かい繊維がまとわりついたように立ち、そこから突き出る丁子の足は鋭く輝いて煌めくガラスの棘のようです。斜めから眺めれば、短い奥行きとなる錯覚の空間に荊の茂みが浮かび上がります。しかも乱雑に縦横無尽に光っているのではありません。統制のとれた匂口・・・まさに肥前刀の特徴である帯状の匂口を踏襲し、刃縁から丁子の足先までの幅が見事にコントロールされています。

刀姿は端正で美しく、しかし内面は鋭い気性を秘めた一振。あるようであまり見かけない匂口に、改めて四代忠吉への見方が変わります。二代忠広譲りの綺麗な地肌に破綻のない直刃・・・そんな優等生的かつ普遍的なイメージばかりが強調されてきたことに反発さえ覚える一振がここにあります。
確かに本脇指も奇をてらった所作はどこにもありません。姿は反深め、元先にやや差があり、延び心の中切先。江戸中期に近い姿に精美な肌と直丁子の刃文。しかし、内包する匂口の様は、一言では語れない煌めきと光景が広がり、印象は違っても見る者に深く問いかけてきます。・・・「果たして、あなたには私がどう映っているのか」と・・・埋もれし美刀のささやきが聞こえてくるようです。

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