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短刀・槍・その他 “うもれし”一振

短刀

上野大掾久国

商品番号 : D-017-U-253

江戸中期 土佐 特別保存刀剣 白鞘

売約済

刃長:28.8 cm 反:なし 元幅:2.45 cm 先幅:1.80 cm 重ね:0.75 cm 目釘孔:2つ

体配
平造、庵棟、生中心、鑢目は大筋違。
地肌
板目に小板目交じり。やや肌立ち気味に、表は刃寄り、裏は刃寄りと棟寄りが柾心に流れる。
刃文
焼幅頃合いに小模様の弯乱。匂口は小沸本位でふっくらと深く、ほつれて微塵な小足が所作し、砂流、打ちのけ風の個所がある。
鋩子
直調に入って小丸となり、滝落し状に深く返って寄る。
上野大掾久国

何気ない中直刃が浅く弯れた刃文に見えます。しかし、刃取りに隠れたその匂口はかなり深く複雑な様相をしています。匂口がほつれる様は、綿毛がまとわりつくような感じで、その強い部分が小足の所作を作り出しています。総体に柔らかく太い棉筋のような印象といったらよいでしょうか。そして鍛えた地鉄にこの匂口が乗ることで、砂流風、あるいは打ちのけ風の沸筋が浮き出て、柔らかくも変化に富んだ景色を作り出しているのでしょう。
この刃文、あまり考えすぎてはいけないのかもしれません。単純に来あたりを模した写にも思えますし、そんなことは頭に中に微塵もなく、オリジナリティを出しただけかも・・・しかし、姿は身幅の狭い造で内反。鋩子の返具合を考慮すれば、研減や欠損、そして時代による変形ではなく、最初から内反の可能性が高いと思われます。やはり古刀の写物の線が有力かと思われるのですが、皆さんはどう思われますか。実はそれよりも本短刀の姿をどう見るかが意見の分かれるところかもしれません。本作は短刀なのか、それとも鎧通として作られたのか? 重は厚く細身の刀身ですが刃長は九寸五分もあります。鎧通にしてはちょっと長過ぎの感が。やっぱり短刀として作ったのでしょうね。だって、本短刀が作られた時代は温和な江戸中期です。無いとはいえませんが鎧通だとすれば珍品です。

本短刀の作者は上野大掾久国、土佐の藩工です。上野大掾と刻っていますので宝永(1704年)頃の初期作です。師は二代・近江守久道。久道ですか・・・本短刀を見る限り作風は似てるとも似てないとも言えますが、久国の作中に簾刃の作があるようなので、久道以外にも吉道など三品一派からノウハウを吸収したのでしょう。それ以外にも濤瀾刃風の作例もあるようで、見てみたいものです。おっと、本短刀の紹介から外れてしまいました・・・こうした情報からは、久国が色々な作刀を試みていたのが窺い知れます。本短刀もその試みの一つだとすれば、何を手本にしたのか興味が再燃します。鎧通? 来写? それとも、三品一派の誰かの作?

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